こんにちは!管理人のクラゲです。
昨今動物病院で働いていると、尿結晶ができた子が多く来院されます。特に犬猫かかわらずストラバイト結晶は多いですね。
一度尿石症になると再発率が高く注意が必要です。もし愛犬のおしっこに赤く色がついていたり、キラキラしたものがあったらすぐに動物病院に行きましょう。
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犬の尿石症の〇%以上は2種類で占める
尿石症とは、体でおしっこが作られて排泄されるまでの過程(尿路)に石ができ、血尿・頻尿・排尿障害などの症状が起こる病気です。
おしっこ中には体に不要になった老廃物やミネラルが溶け込んでいますが、このミネラルが飽和状態(液体にこれ以上物質が解けきれない状態)になってしまうとミネラル成分が析出し結晶となります。
結晶自体は目に見えないほどのサイズから握りこぶしサイズまで大小様々です。
尿結晶(尿石)自体は6種類ありますが、
- ストラバイト結晶(リン酸アンモニウムマグネシウム)
- シュウ酸カルシウム
の2種類がわんちゃんの尿石症の80%以上を占めます。
残り20%ほどを以下の4種類が占めます。
- 尿酸アンモニウム結石
- シスチン結石
- ケイ酸結石(シリカ結石)
- リン酸カルシウム結石
①ストラバイト結晶
ストラバイト結晶は、おしっこのpH(液体が酸性かアルカリ性かを示す尺度)がアルカリ性に傾くとおしっこ中にできやすくなります。
ストラバイトができる要因としては、主に以下の5つです。
- 尿路の細菌感染
- 尿のアルカリ化
- 尿中のミネラルの増加
- 尿量・飲水量の減少
- 尿頻度の低下
尿路(膀胱や尿道)に細菌が感染すると、細菌の出す酵素(ウレアーゼ)の作用によって、おしっこのpHがアルカリ性になってしまうため、ストラバイト結晶ができやすくなります。
また、女の子の場合は尿道が短いので細菌感染を起こしやすいという報告もあります。
他にもおしっこ中のミネラルが増えすぎたり、尿の排泄が少ない・尿量が少ないとおしっこ自体が濃縮してミネラル成分が析出してしまします。
②シュウ酸カルシウム結晶
シュウ酸カルシウム結晶の原因は、食事中から「シュウ酸」を摂取したことによるものがほとんどです。
シュウ酸が体内に吸収されると、尿中に排泄されカルシウムと結合し結晶となります。主に腎臓で作られ、尿量が減少したり尿中のシュウ酸やカルシウムが飽和状態になると結晶ができやすくなります。
シュウ酸カルシウムができる要因としては、主に以下の3つです
- 食事からのシュウ酸の摂取
- 尿量・飲水量の減少
- 尿頻度の低下
シュウ酸カルシウムはストルバイトと異なり尿が酸性・アルカリ性の影響をほとんど受けません。
そのため、一度シュウ酸カルシウム結晶ができてしまうと、溶けないので注意が必要です。
(尿道の短い女の子で、結石自体が小さければ尿中に出てくる可能性もあります。)
そのためシュウ酸カルシウムを予防するには尿量を増やし、尿中のミネラル濃度を下げることが必要となります。
シュウ酸が腸で吸収されて血液中に入る前に、腸内でカルシウムと結合させ便として排泄させること、消化が良くミネラルバランスの良い食事をとることが必要です。
尿石症は『口から入る物』に原因がある

尿石になる原因は、以下の2つです。
- 食事からのミネラルの過剰摂取
- 尿でミネラルが濃縮
ミネラルは主に腸で吸収され血液中をめぐり、体に必要な分は利用され必要のない分は腎臓でろ過されて尿中に排泄されます。
通常であれば、尿中には析出するほどのミネラルは出てきませんが、ミネラルを多くとりすぎたり、尿の頻度や量が減ると尿が濃縮されると、ミネラル分が飽和状態になり析出してしまいます。
この析出したミネラルが尿結晶・尿石症の原因になるのです。
尿が濃縮するのを防ぐためには、よくお水を飲ませることと、頻繁におしっこに行かせることが重要になってきます。
外でしかおしっこをしないのであればよく散歩に連れ出してあげることも大切です。
そして、結晶の材料となるミネラルをコントロールするために、シュウ酸やマグネシウム量を制限したフードを与える必要があります。
また、フードには気を付けていても「おやつ」は特に気を付けていなかったという方もおられますので、愛犬が口にするものは全部気を付けたほうがいいでしょう。
尿石症を予防するためには体重管理が重要

尿石症を予防するためには毎日の食事に気を付ける必要もありますが、それ以外の生活習慣にも目を向ける必要があります。
もちろん尿石症用のフードに切り替えれば尿中に結晶はできなくなります。しかし尿石症ができやすい生活習慣を変えないとフードを戻したときに再発する可能性が高くなります。
- おやつにも気を付ける
- 良く遊ぶ・運動をさせる(尿石症は肥満の子に多い傾向)
- おしっこを我慢させない
- ストレスをためない
- 水をよく飲ませる(飲ませる工夫をする)
尿石症になりやすい子は肥満の傾向にあります。尿石症フードだけでは足りず飼い主さんにおねだりをすることが多くなり、ミネラルの多いおやつを与えすぎた結果、尿結晶ができます。
さらに、肥満になると日中の活動量も減ってきます。活動量が減ると比例するように飲水量も減ってきますので、尿の排泄も減り、尿中にミネラルが濃縮してしまいます。
もともと尿石症になりやすい子もいますが、基本的には生活習慣や食事、肥満が関係してきます。
他の病気でも同じですが、病気になりやすい環境・条件を改善してあげないと、いつまでたっても治るものも治りません。愛犬の健康のためにも今一度生活環境から変化していきましょう。
尿石症用フードを選ぶ時のポイント

尿石症フードは療法食メーカーからいくつも出ていますが、どの療法食がいいかは飼い主さんだけだとわからない場合が多いと思います。
どの尿石症フードも一定の効果はありますので、基本的に愛犬が食べるものを探しましょう。
尿石症フードを選ぶポイントとしては、以下の2つです。
- 愛犬が食べるものを探す(動物病院でサンプルをもらう)
- 他の併発疾患にも適応したものを探す(肥満や食物アレルギーなど)
一度これと療法食を決めたなら1か月はあげ続けましょう!
1か月後、尿検査をして結晶がない・減っているのならば効果が出ていると考えられますので継続します。もし効果が見られないのであれば、ほかの療法食に切り替える。という流れで尿石症は治療していきましょう。
なぜ療法食が尿石症に効果があるのか

尿石症用フードの特徴には以下の4つがあります。
- ミネラルバランスの調整or制限
- 膀胱の健康をサポート(細菌感染を予防)
- 尿pHを弱酸性に設定
- 犬が水を飲みやすくするように調整
尿石症の原因となるミネラル量をコントロールし、さらに結晶が析出しにくくなるように尿を弱酸性に、尿量を増やすために喉が渇きやすくなるように調整されています。
また膀胱への細菌感染を予防するために、膀胱粘膜を強化し健康をサポートします。
おすすめ尿石症用ドックフード
①ヒルズ製品
ヒルズという療法食メーカーが販売している尿石症用フードです。
- ストラバイト尿石の溶解と発生・再発の予防
- シュウ酸カルシウム尿石の発生と再発の管理
肥満傾向の犬には「メタボリクス+ユリナリー」がおすすめです。
②ロイヤルカナン製品
ロイヤルカナンという療法食メーカーが販売している尿石症用フードの一つです。
ストラバイト結石症及びシュウ酸カルシウム結石症の犬に給与することを目的としており、ほかのpHシリーズの製品と比較すると「小粒」で小型犬にもあげやすいサイズとなっています。
ロイヤルカナンには他にも、マルチファンクション(多機能フード)シリーズがあり、
- 尿結晶とダイエット対策のフード「pHコントロール V2+満腹感サポート」
- 尿結晶と食物アレルギー対策のフード「pHコントロール V2+低分子プロテイン 」
がありますが、いずれも通販では購入できませんので動物病院で処方してもらう必要があります。
③ブルーバッファロー

自然派フードを販売しているブルーバッファローにも尿石症フード「WU(ダブルユー)」がありますが、こちらは通販では販売しておらず、動物病院でのみ販売しています。
まとめ:犬の尿石症は食事療法が重要!
犬の尿石症には薬を使うことはほとんどありません。
というのも、基本的に食事に気をつければ自然に溶けたり大きくならないので薬には頼らないのです。
と言っても尿道から出ないような大きさになり緊急性がある場合には、手術にって取り除く必要はあります。
尿石症治療にはご家族の協力が不可欠です。
特にお子さんやおじいちゃん、おばあちゃんにも良く愛犬の病気のことを話しておいて協力してもらいましょう。
折角、療法食を続けていても、一人でも「おやつ」をあげてしまうと、食べたフードの効果がなくなってしまいます。
愛犬の健康のためにも、家族一段となって頑張ってください。